NISAでの長期運用で、現在・過去・未来の視点を踏まえると、以下のお薦めになります。
20年以上の超長期投資:全世界株式インデックス投資
10年程度の長期投資:S&P500インデックス投資
現在の短期的な比較
最近10年間は、S&P500の成績は出来過ぎのようにも見えて、高値への警戒感も気になるところですが、圧倒的にS&P500が優勢な状態が続いています。
それでは、成長率及び年率の指標で全世界株式とS&P500を確認しましょう。
現在の成長率での比較
双方の成長率を見てみると、2011年に10,000米ドルを投資した場合に、2023年12月時点では、S&P500(VOO)が46,435米ドル、全世界株式(VT)が27,488米ドルであり、約1.7倍の差をつけてS&P500が圧倒的に優勢な状態です。
現在の年率での比較
また、各年の年リターンを比較しても、全世界株式(VT)の方が優れていたのが、2012年、2017年、2022年の3年だけであり、それ以外の10年は、S&P500(VOO)が圧倒的に優れている状態です。
100年前に遡っての長期的な比較
100年前と現在の株式市場の勢力関係は、大きく変わっており、歴史から学ぶことができる内容もあります。
その概要は以下の2点に集約されます。
覇権国は、戦争などを契機に勢力交代する可能性が高いため、一つの国だけへの集中投資は危険である。
アメリカと言えども、市場規模を6割以上を常時独占し続けることはできなかったため、アメリカへの集中投資が常に利益の最大化とはならない。
100年前の過去と現在の点と点を比較
欧米列強が全世界で覇権争いをしていた1889年当時は、覇者のイギリスが24%を占め、アメリカ・ドイツ・フランスなどが追随しており、日本は新興国として市場規模は1%未満の状態でした。
時を2023年に戻すと、アメリカが全世界の覇者となり、米国一強で58%まで市場規模を拡大しており、先進国に鞍替えした日本が2番手になり、かつての覇者イギリス・フランス・ドイツなどは市場規模が縮小した状態となっています。
このことは、世界の覇者を長期間維持するのは困難であり、米国一強時代も長くは続かない可能性が高いことが伺えます。
100年前の過去と現在を線で結んで比較
過去に世界の覇者が移り変わる契機になるのは、戦争が大きな位置づけになっています。
アメリカが市場規模を拡大する時期を見てみると、第一次世界大戦、第二次世界大戦後であるとともに、衰退を見せたのはベトナム戦争後になりますが、湾岸戦争を契機に日本との経済戦争に打ち勝ち、再度復活を遂げています。
このことは、アメリカと言えども世界情勢の変化によっては、市場規模6割以上を常時独占し続けることはできないことが伺えます。
過去100年間の実質年率を比較
124年間における株式の実質年率を確認してみると、アメリカが6.4%、世界平均値の全世界インデックスが5.0%となっており、アメリカの株式だけ持っていれば平均以上の利益が得られると捉えることができます。
しかしながら、前の覇権国であったイギリスは5.2%と平均値程度に落ちてきているとともに、列強国だったドイツ・フランスは平均値以下となっていることも事実ですので、特定の国が栄え続けることも否定されます。
また、イギリスの覇権国としての活動期間は、1815年ワーテルローの戦いで勝利したことが始まりで、その衰退は第一次世界大戦終わりの1918年からアメリカに主導権を奪われていきましたので、約100年間にわたって覇権国の位置を確保していました。これをアメリカに当てはめた場合に、1918年から既に100年経過した現在は、中国との覇権国争いでどうなるかは予断を許さない状況になるかもしれません。
未来を予測した比較
国際通貨基金(IMF)が半年に1回発行する主要国などの世界経済見通し(WEO)によると、2028年年末までのGDP推移予測は、下図のとおりとなっており、アメリカの経済成長は見込めますが、首位独走とはいかない状況を予測しています。
全世界株式とS&P500の双方が主張するメリット
一般的に言われている双方が主張するメリットは以下のとおりであり、それぞれの将来性をどう判断するかで選択が異なってきます。
S&P500のメリット
最近は特に人気があり、将来的にも経済成長が見込めてパフォーマンスも良いという内容になっています。
ポイント
米国は先進国では唯一の人口増加国であり、経済成長が見込める
投資家の利益を守る法律が整ってるため、資産保全が安全にできる
米国企業は世界中で事業を行っているので全世界投資と同じことになる
全世界株式のメリット
全世界の株式を対象としており、各国の市場規模が変動すれば自動で投資比率を調整してくれるので、途中解約も必要なく将来的にも継続保有できるとともに、パフォーマンスも世界経済の平均値を見込めるという内容になっています。
ポイント
世界中に投資する究極の分散投資のため、カントリーリスクが少ない
米国の経済成長、新興国の将来性の両方を全て取り込むことができる
将来的に発展する国のGDPに比例して国ごとの投資比率が自動調整される
総合的に全世界株式とS&P500を比較
双方を比較する前に、共通したデメリットである『資産分散』していないことを補うものとして、バランス型の金融商品がありますので、併せて比較すると、以下の比較要因での結果は以下のとおりです。
リスク分散:S&P500は、将来的にカントリーリスクの危険性を持ち続ける(バランス型>全世界株式>S&P500)
パフォーマンス:S&P500は、現在・過去の範囲では世界平均値以上である(S&P500>全世界株式>バランス型)
手数料:全世界株式が、現在は信託報酬で一歩リードしている(全世界株式>S&P500>バランス型)
純資産総額:それぞれ資産額が十分あるため、ファンドの廃止はない(S&P500>全世界株式>バランス型)
以上のことから、NISAで長期投資を検討されている方は、以下の方向性で金融商品を選択することをお薦めしますが、実際の投資は自己責任でお願い致します。
5年程度投資期間の選択肢
ポイント
5年程度の投資期間では株価の変動が大きいため、株価と異なる値動きをする債権などを組み合わせて資産分散できる金融商品が望ましいので、eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)をお薦めします。
10年程度投資期間の選択肢
ポイント
10年程度ですと株価変動も落ち着いて、現段階でパフォーマンスの最大化が見込める金融商品が望ましいので、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)をお薦めします。
20年以上投資期間の選択肢
ポイント
20年以上先のことは誰にも分かりませんから、全世界のどの国が覇権や経済成長を遂げても、時価総額加重平均方式で投資バランスを自動調整してくれる金融商品が望ましいので、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)をお薦めします。
全世界株式ファンドの種類と特性を詳しく知りたい方は、以下のブログにまとめてありますので、ご覧頂ければ幸いです。
まとめ
NISAで超長期にわたって投資を始める方は、将来的にアメリカが衰退した場合でも、国別投資比率を自動調整してくれる「全世界株式」で運用することで、最大パフォーマンスは得られませんが、全世界の平均値である年率5%程度で運用できることを理解頂ければ幸いです。
そのうえで、S&P500と全世界株式のどちらを選択するかは、個人ごとに何を重視するかで選択していって下さい。・・・positive smile😊